今週の土曜日は、サポートしている漁協のアマゴの成魚放流のお手伝いに行ってきました。放流終了後には、アマゴ釣りをしましたが、最近、スランプで釣果が延びない情況です。アプローチ、キャスティング、流し方など基本に立ち返って色々試してみますが、なかなか上手く行きません。「魚がいなければ釣れないよ」とは、師匠のお言葉ですが、魚が目の前にいるのに釣れないのは、心が折れるもの。焦らず、基礎からゆっくり復習したいと思います。
さて、今回は、年次有給休暇の関するお話をしましょう。年次有給休暇は一般には「有休」と呼ばれいています。労働基準法第39条に定められており、入社後6ヵ月を経過したときに所定労働日数の8割以上を出勤していれば10日の有休が与えられます。その後は、1年ごとに所定労働日数の8割以上の出勤で20日まで徐々に与えられる日数が増加します。
また、1年間に与えられる有休が10日以上ある労働者については、5日をその年度内に取得させなければなりません。有給の取得時には、①通常の賃金②平均賃金③健康保険の標準報酬月額の1/30の額を支給する必要があります。2019年4月の労働基準法改正を前に残業の限度時間や年休の5日付与などについてセミナーを行ったことを思い出しました。その席で、受講者から「5日の付与は、形式上、使用者が日を特定すれば足り、実際に年休を取得しなくても違法にはならないと聞いたが本当か?」との質問を受けました。労基法では、「時期の指定と取得を定めているため、実際の取得が適法となる要件である」旨を説明しました。懐かしく思いますが、5日取得の義務化以降、有休の取得率が向上していることは労働者の健康を保持する、又はワークライフバランスの調和を図る観点から労使双方にとって良いことでしょう。
年休は、原則として、入社日から6カ月を経過した日が基準日(年休を与える日)となりますが、会社などが独自に基準日を設けることを妨げるものではありません。新卒者の多くは、4月1日に入社することがほとんどでしょうから、10月1日が労基法に定める基準日となり、それ以降、毎年、10月1日に年休を与えることとなります。しかし、労働者の多い企業では、基準日が異なることは、管理の上で手間がかかります。そこで、会社独自の基準日を設けることが有用になります。仮に、10月1日を会社独自の基準日とした場合には、全ての労働者が10月1日に一斉に年休を与えられることとなり、年休の取得の管理も10月1日から翌年9月30日までの間になりますので管理上の手間を省くことができます。
ここで、問題となるのは、4月1日入社以外の労働者についてです。その理由は、会社独自の基準日を設ける場合には、その基準日までの期間が6か月又は1年に満たない場合には、6か月又は1年を経過したものとし、その期間の所定労働日について全ての日を出勤したものとして取り扱うこととされているからです。仮に、9月1日に入社した労働者であれば、1カ月経過後の10月1日には6カ月経過したこととなり、10日の有休を与えることとなります。その後は、1年経過後の10月1日に有休を与えることになりますので問題はありませんが、事業主の中には、1か月で有休を10日与えるのは抵抗を感じる方もおられるようです。そこで、入社した年は、6カ月経過した日に有休を与えることとし、それ以降は、10月1日の基準日に合わせるとすることもできます。しかし、結局は、2年目に1年を経ずに次年度の有休が与えられるわけですから、それであれば入社年から適用したほうが管理は楽です。ただし、入社して6カ月経過した時点で会社の独自の基準日が到来しない場合には、労基法通りに6か月経過した日に有休を与える必要があります。つまり、一部の労働者については、どうやっても最初から会社基準日に合わせることができないことがあるので注意が必要です。
この他に、入社後、有休が与えられるまでの6か月間、病気などの理由で仕事を休む必要が生じることもありますので、入社日に有休の一部を与えて、6カ月経過後に与えた有休の合計日数が10日になるようにするケースもあります。労働者にとっては、ありがたいことですが、事業主が注意をしなければならないのは、このようなケースの場合、有休の基準日は、入社から6カ月後ではなく、入社日となることです。つまり、6か月基準日が早くなるのでお間違いの無いよう。
それから注意を要するのが、会社独自の基準日を設けた場合の「ダブルトラック」の発生です。ダブルトラックとは、10月1日に有休が10日与えられた後に翌年の4月1日が会社基準日で、その日に次の年度の有休を11日与えられた場合などに発生します。10月1日の有休は翌年の9月30日までに5日は取得しなければなりません。翌年の4月1日の有休は翌々年の3月31日までに5日取得しなければなりません。定期的に有休を取得させ、消化率の高い企業であれば問題はありませんが、人員不足などでなかなか有休を取得させられないような場合には、ダブルトラックをしっかりと認識しておく必要があります。翌年の4月1日から翌年の9月30日までの期間が重複した期間となっていますので、その分を期間に応じて案分しなければなりません。従って、このケースだと、10月1日から翌翌年の3月31日までの18ヵ月間において、1年につき5日の割合で有休を取得させる必要があります。
18ヵ月÷12か月×5日=7.5日となり、8日の有休の取得が必要になります。会社独自の基準日を設けている場合にはチェックをしてみると良いでしょう。
それから、有休取得時の賃金について歩合給制を採用している会社では、適切に計算をしていないケースを散見します。ほとんどの企業において有給取得時の賃金は、「通常の賃金」としていると思いますが、歩合給制(労働基準法では出来高給制と言います)を採用している場合、歩合の対象となる売り上げや利益を獲得したのは、有休以外の実労働をした日ですから、有休を取得した日には、歩合給の有休取得時の賃金額を追加で支払う必要があります。仮に、或る月の基本給が32万円、歩合給が16万円で合計48万円、1日の所定労働時間8時間、月平均所定労働時間数が160時間、その月の総労働時間数(所定労働時間数+残業時間数)200時間とすると、基本給に対する通常の賃金日額は、32万円÷160時間×8時間=16,000円となります。これは、有休の日は通常、控除加算しませんので、基本給はいじらないのが普通でしょう。これに対し歩合給に対する通常の賃金日額は、16万円÷200時間×8時間=6,400円となります。この額を48万円の賃金に加算して支払う必要があります。
その他に有休に関する間違いで多いのが、有休は会社の承認を要するとの運用をしているケースと使用者の時季変更権はいつでも行使できるとの運用をしているケースです。有休は、労働者が取得時季を指定するだけでOKです。会社の承認や取得の理由などは不要です。また、時季変更権は、労働者の指定したときに有休を取得した場合に事業の正常な運営の妨げとなる場合に認められるものであり、勤務シフトで人数の少ない日に休まれると困るなどという理由では時季変更権は行使できません。ご注意ください。
その他に、ボーナスの支給基準に有休を取得した期間を賞与の減額対象期間としているケースも散見します。有休を取得したことで不利益に取り扱うことは法の趣旨に反することとして認められません。有休を取得したことでボーナスが減額されるのは、有休の取得を阻害することとなりますのでこのような規定がもし存在するならば、直ちに改訂をする必要があります。自社の就業規則を確認されると良いでしょう。