先日、事務所近くの和食とてんぷらの店に行きました。外観は、何となく入りにくい(敷居が高いのではなく、どう見ても美味しくなさそう)雰囲気でしたが、友人と思い切って入ってみました。出てきた料理を見た瞬間、「これは美味い」と直感しました。どの料理もきちんと料理され、本当に美味い料理でした。人に限らず、見た目で判断してはいけないと反省をしました。
ずいぶん前に通勤災害について書いた記憶がありますが、今回は通勤災害に該当するかどうかについて考えてみましょう。「通勤災害に該当するかどうか」ということは、通勤災害に該当しないことがあるということです。通勤災害とは、自宅と職場の往復の通勤途上に起こる負傷や疾病のことです。労働者災害補償保険法(労災保険法)では、通勤災害を補償の対象としています。私共がお客様からご相談をいただくのは、ほとんどが自動車事故による負傷のケースです。稀に、駅の階段で転んだという連絡をいただくこともあります。
労災保険法における通勤災害は、、(1)住居と就業場所との間の往復、(2)単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動、(3)就業場所から他の就業場所への移動を、合理的な経路及び方法で行うことをいい、業務の性質を有するものを除くと定義されます。
⑴住居と就業場所との間の往復については、比較的理解がし易いでしょう。自宅から職場を想像すれば良いです。⑵単身赴任先住居と帰省先住居との間の移動は、単身赴任をした場合の、赴任先のマンションから家族の待つ自宅、又はその逆を想像すればよいでしょう。⑶就業場所から他の就業場所への移動については、副業をしていて2つ以上の企業で勤務している場合に、最初の職場から直接、次の職場まで行く場合を想像すればよいでしょう。
「合理的な経路及び方法」とは、どのようなものでしょうか?合理的な経路とは一般に通常利用する経路であり、複数の経路がある場合にはそれらすべてが合理的な経路となります。合理的な経路でない場合はどのような場合でしょうか?それは、合理的な理由がなく、著しく遠回りとなるような場合です。自宅の最寄り駅から勤務先まで電車一本で行ける場合に、勤務先と反対方向に向かって電車に乗り、どこかの駅でバスに乗り換えて勤務先まで行くような大回りをするようなケースです。ただし、このルートが最短の時間で通勤できるのであれば合理的な経路に該当するとは思いますが。次に、合理的な方法というのは、公共交通機関を利用する、マイカーや自転車を利用するなどです。仮に、電車通勤をすると会社に申告をしていた場合に、マイカーで通勤したとしても合理的な方法とされます。
さて、ここで単純化をして、自宅から勤務先までの通勤途上に起こった事故について考えてみましょう。神宮前駅から金山駅を経由して栄まで通勤する場合に、通常は、名鉄及び地下鉄を利用します。神宮東門から栄まで市バスを利用しても良いでしょう。合理的な経路及び方法です。地下鉄と名鉄を利用し帰宅する場合に、金山駅の地下鉄改札を出てエスカレーター横のファミマでお茶を買ったときに床が濡れていて滑って転倒した場合、通勤災害となるでしょうか?この場合は、「ささいな行為」を行ったとして通勤途上であるとされ通勤災害に該当します。では、エスカレーターに乗って名鉄金山駅の改札口の上にあるミュープラットのラーメン屋に入り、夕食を取って店を出るときに同様に転倒した場合は、通勤途上として通勤災害になるでしょうか?この場合は、通勤途上から中断・逸脱したものとして通勤災害には該当しません。中断・逸脱とは、通勤を中断したり、合理的な経路から逸脱することを指します。では、ラーメン屋では転倒せずにその後名鉄の改札口にむかってエレベータ―に乗るときに転倒した場合はどうでしょうか?この場合は、中断・逸脱から通勤途上に復したものとして通勤災害と取り扱われます。何となくわかりにくいですが、「日常生活上必要な行為であって厚生労働省令で定めるものをやむを得ない事由により最小限度の範囲で行う場合」には、中断・逸脱の間を除き、合理的な経路に復した後は再び通勤途上にあるとされているからです。夕食を取ることは、日常生活上必要な行為であり、最小限度の範囲に含まれます。ただし、金山駅から相当離れた店に行くような場合や外食をする必要性のない場合などは、通勤災害とされないケースが多いです。
では、ラーメン屋ではなく居酒屋で一杯飲んでから通勤経路に復した場合はどうでしょうか?この場合は、通勤災害とはされません。飲酒は日常生活上必要な行為で最小限度の範囲に含まれないからです。
つまり、中断・逸脱の考え方は、基本的に通勤経路から外れ、通勤とは関係ないことをする場合には、中断・逸脱に該当し、その後、通勤経路に復しても通勤途上とはされずに、通勤災害とされないのが原則です。しかし、日常生活上必要な最小限の行為をする場合には、その間(中断・逸脱の間)は、通勤災害とはされませんが、その後通勤経路に復した場合には再度、通勤途上にあるとして通勤災害とされるのです。
この他、通勤途上の概念に、マンションにおいて自宅のドアからマンションの共用部の廊下を通って出入口までのマンション内部は通勤途上であり、一戸建てのドアから門扉までの間は通勤途上ではないというのが有ります。何となく釈然としませんが、共用部は、不特定多数の人の往来があるため、通勤途上とされているようです。
「業務の性質を有するものを除く」とされているのは、それは業務災害であるから通勤災害ではないということですが、どのようなケースが想定されるかというと、出張をする場合に、自宅から出張先までの間にケガをしたような場合です。出張先を職場と考えれば、自宅から職場ですから、通勤途上のように思えます。しかし、出張は業務命令に基づくものであるため、自宅から出張先までは業務中と考えるのです。ひと口に通勤災害と言っても、ケースバイケースで通勤災害として認められたり認められなかったりします。仕事帰りには、無駄使いをせずに、そそくさと自宅へ帰れということでしょうか。