忘年会シーズン突入で毎日、飲んでばかりです。年のせいか楽しさよりも辛さの方が優ると感じてしまいます。美味しいものを沢山いただくのですが、漬物や冷やっこ、大根おろしなどさっぱりしたものが欲しくなります。この歳でも揚げ物が大好きですが、居酒屋メニューや焼き肉はさすがに堪えます。あっさりしたものを中心に食べようかなどと考えてしまいます。
さて、ほぼ11カ月にわたり人材定着のための具体的な処方についてを書いてきましたが、ちょっと視点を変えて、従業員の立場でいろいろ考えてみるのも面白いかなと思います。例えば、前回のテーマである無申告残業は、従業員からすると次のような意見もあるのではないでしょうか。「別に残業をしたくてしている訳ではない。残業をするときは申告をするように言われているが、申告をしなくても上司は何も言わない。本当は早く帰りたいのだけれど、上司や同僚が帰らずに残業をしているので仕方なく付き合っているだけ」
このような状態が続くと残業をするのが当たり前となってしまい、感覚的には残業の終了時刻が「定時」となってしまうでしょう。自分のサラリーマン時代には営業職は残業という感覚は皆無で、数字を挙げれば帰ってよし、それができないならいつまでも居残って受注のために電話をしたり訪問をしたりすることが当たり前でした。勿論残業手当など支払われたこともありません。俗に言うサービス残業ですね。40年も前のことですから、情報を簡単に入手できる時代ではなく、また、自分自身も労働基準法等の法令に対する知識もありませんでした。実は、私は大学では労働法のゼミでしたが全く勉強していなかったため非常に無知でした。私の場合は、入社直後に配属された支店では、直属の上司が、声をかけてくれると一緒に飲みに行くために帰宅することができるのです。それがほぼ毎日だったので、私はほぼ残業をせずに上司のお供で大体定時に帰宅するという幸運?に恵まれたのでした。それが日常となり、私自身はあまり残業をしたことがありません。まあ、数字が挙がらないときには冷ややかな視線を感じながら退社していましたが。
他の先輩や同僚は、帰りたくても周りの目があるために帰れない情況でした。この状況は、今も比較的多くの職場であるのではないでしょうか。申告制とは言え、適切に運用しているケースはあまりないのではないかと推測します。経営側は、柔軟に対応しているなどと言いますが、従業員にとっては「適当にやっている」としか見えません。だとすれば、仕方なく居残らざるを得ないということになります。
もう一つダラダラと残業をする要因となるのが、上司からの適切で明確な指示がないということではないかと考えます。仕事を与える場合に、期限を切る訳ですが、具体的な進捗状況の確認や指示がないままに放置されるような状況が日常的にあるのではないでしょうか。しっかりと訓練された優秀な従業員でない限り、日々、具体的に上司から進捗状況を求められ問題点などを指摘されるようでなければ、ダラダラと日々を過ごして、締め切り間際に焦って仕事に取り掛かることが往々にしてあると思います。従業員の個人の能力の問題ではありますが、中小企業では中々教育が行き届かずに、本人任せとなっていることがあります。仕事の進め方、指示の出し方や受け方、スケジュール管理、進捗確認のタイミングと指導の仕方、周囲への事前の根回しなど仕事を行う上での必要なスキルをきちんと教育されていないことがほとんどではないでしょうか。当事務所においても同様で、OJTとは名ばかりの行き当たりばったりで仕事を教えているだけです。経営者として大いに反省し、今後の教育について真剣に考えなければならないと考えています。
ざっくばらんに言うと、部下は上司から仕事をやるように指示をされたが、期限までに何となく自分流で進めていき、期限間際になって、あたふたして上司に叱られながらなんとか間に合わせる、ということです。業務の進捗管理が出来ていないために定時で仕事を切り上げられない情況にならざるを得ません。「だって、入社以来、自分で考えて仕事をするように言われて、何も教えてもらっていない」と従業員の声が聞こえてきます。上司も上司で、「期限はちゃんと指示したので後は本人の責任だ」などとうそぶきます。管理職の仕事はマネジメントが中心です。マネジメントは予算管理と人材育成です。業務管理は予算管理の一部であり、如何に低コストで高付加価値の物を顧客に提供できるかを管理することです。管理職である上司が適切にこのことを行っていれば、無駄な残業は削減できるはずです。
このように考えると、社内ルールの徹底と基本的な業務知識やスキルを体系的に教育することが残業の削減に有用だと言えるのではないでしょうか。中小企業においては、管理職がプレーヤの仕事ばかりしてマネジメントを全くしていないので困ったものだとの経営者の嘆きを聞きます。しかし、よくよく考えてみれば、管理職もまともに教育を受けていないわけですから、部下の育成などのマネジメントができるはずがありません。管理職の本音を聞いたこともあります。「自分だって部会の育成に時間を割きたい。でも、人手が不足しているのでその時間を作れない」と言います。しかし、これは本末転倒です。確かに人手不足という事実がありますが、部下の育成が出来ていないから自分までルーティンワークなどをこなさなければならない状況を作り出していると考えなければなりません。経営者も新入社員や若手の教育の必要性は理解していても管理職に任せっきりで、上手く行かないのは管理職のせいだと決めつけています。そうではありません。まずは経営者がしっかりと管理職に教育の機会を与えて管理職を成長させることが必要です。従業員の育成は、先ずは経営者が率先して取り組まなければならないでしょう。